アニメ界のオワコン化について考える
今回取り上げたいのは、シネマトゥデイの11月30日に配信された『アニメ界で危惧される「オワコン化」リスク回避のための制作本数増加が原因か?』というニュース。
シネマトゥデイ自体がいろいろなところにニュース配信しているおかげもあって昨日から今日にかけて何か所ものニュースサイトで配信されているのを確認しました。そこそこでいろんな反響があるようです。
公野氏のセミナーの発言から考える
記事によると、そもそもの発端は「今、日本の映画産業に何が起きているのか?」と題したセミナーが開かれて文教学院大の教授で映画業界にいた公野勉氏がアニメついて触れたのがキッカケ。公野氏は現在、株式会社白組*1でコンテンツ・スーパーバイザー職にあるそうで、その観点からの発言だと認識しています。
具体的な発言の要旨を引用させていただくと
アニメ業界をめぐる問題点について「制作会社が1番リスクの高い流通システム」「オンエア期間の短期化による1クール(3か月)作品の増加」「制作本数の増加に対応できる大手制作会社が優先して受託」「定額で受託する会社の増加。結果的にスタッフ数も増加し悪循環」「声優のギャラの増大による映像制作費の圧縮」「ビデオソフトの売り上げ減」「原作者・クリエーター・声優の権利増大」といった例を挙げて、アニメ業界の現状を解説。
公野教授が危惧するのは「アニメ作品のオワコン化」だという。放送中にはどんなに話題を集めたアニメも、制作本数が多いために、放送終了後には視聴者の関心は次のアニメに移ってしまうこともしばしばだ。それによって固定のファンがつかず、マーケットが組成されない現状があるという。
この辺の問題意識はすでに業界の内部からも、アニオタからも指摘されていることが多いですね。
現に、製作本数の多さはアニメファンがすべてを網羅しようと思ったら首都圏に住んでいて(MXが映って)AT-Xを契約しているうえにW録以上の録画機器を持っているニートwしか不可能という状態。
ただ、そんなに苦しいなら製作本数減らせばいいのに。って単純に思うけど、何枚書いてなんぼの世界のアニメーターにとって仕事が減ることはサラリーマンよりも死活問題に直結するのだろう。
アニメ製作のキャパシティが決まっているならできるだけ無駄なリソースをなくして多くのアニメーターに仕事を分割する仕組みが健全なんだろうけど、個人の能力の差っていう絶対的な越えられない壁がある以上はやっぱり単純な話じゃないんだろうなぁ。
他にも、公野氏は仮にも業界人なんだから簡単に『アニメのオワコン化』っていう発言をしてしまうのはどうかと思う。映画業界で活躍していて現状のアニメ業界に携わるようになってから日が浅い?せいもあるのかもしれないが、ここら辺がちょっと他人事のような気がして。
まあ、大学教授で製作会社のアドバイザー的な仕事なら他人事なのもわからなくはないですが。
何故か声優に矛先がむく公野氏の見解
しかし、ここのツッコミどころはそこではないのです。
「声優のギャラの増大による映像制作費の圧縮」と述べられているように、公野氏の論理の矛先は声優に向かっていきます。
公野教授は、その要因として「作品内容よりも声優人気に依存するケースが増えたため、効果的な集客はオンエア期間のみになってしまう傾向がある」と指摘する。
それって、公野氏がアドバイザされている会社が作った『えとたま』のことですか?w。
冗談はともかくとして、オールスター級の声優を集めて大爆死した作品はいくらでもあります。最近では、作品によっては発売イベントも箱が埋まらないモノもあるという風に聞こえてきます。(私には遠すぎて行ったことありませんが)
さらに、声優のギャラってランク制だったのでは?。製作費を抑えるために、新人や若手声優を多く起用しているといわれ、若手のころにいくら売れていてもある一定から上になると声優として生き残るのは難しい業界だという風に思っていました。
確かに、公野氏の言う通り声優人気に依存した作品はあるのかもしれません。ただ、それと声優ギャラの増大による映像制作費の圧縮とはあまり結びつかない気がするのは気のせいでしょうか?
また、効果的な集客はオンエア期間のみってそれは声優の人気と関係ないよね。作品が後々にまで話題になり続けるほどの作品じゃないからですよね。いい作品(例えばまどマギ)だったらそれなりに放送期間が終わっても話題になり続けたと思いますよ。
要は、制作側の問題はきちんと指摘出来ているのに、声優周りの発言はこじつけばかりということ。これに尽きると思います。
公野氏の視点からオリジナル作品を考える
ここまで、公野氏には結構厳しいことを言ってしまいましたが、オリジナル作品について重要な指摘をされているのでこちらも引用したいと思います。
「原作作品であれば原作人気でブームを保温できるものの、オリジナル作品の場合は放送終了と同時に何か手を打たないとオワコン化する」と付け加えた。
これは重要な指摘だと思います。私も今年一年の作品を振り返る企画をやっていて思うことの一つに、オリジナル作品が売上的にも話題的にも元気がないということを感じています。
制作側のアイディアが面白くて、意欲作だなぁと思うことも多かったのですけどね。
具体的に言うと、SHOW BY ROCK!!は結構話題にもなったし売り上げも良かったので2期が決定されたみたい。Charlotteも話題にはなっていたのですが、こちらは期待値が高すぎたか?。
まあ、オリジナルについてはまた別の機会に触れることにしましょう。
最後に
ここまで、公野氏の記事を引用してこのエントリーを記述してきましたが、私自身がこのセミナーに参加していないので1次情報には当たれていません。なのでニュアンスを誤解している個所があれば申し訳ありません。
公野氏の指摘されていることは、一部を除いてこれまでに指摘されていたことも多く、問題点の整理という意味では非常に有意義なセミナーになったのではないかと思います。
これらのアニメの業界にまつわる問題点は一義的には業界が対策を講じなければならないと思いますが、ユーザーにも関心を持ち続けることが必要だと思います。
最後に、マイナビニュースでポリゴン・ピクチュアズについて取り上げられていた記事を見つけましたのでリンクを張っておきます。
このビジネススキームは閉塞感漂うアニメ業界に風穴を開けるものなのかどうか、注目していきたいと思います。
http://news.mynavi.jp/news/2015/11/23/043/news.mynavi.jp
[asin:4798037788:detail]